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バブル崩壊、リーマンショック、アベノミクス…平成以降の経済の主な出来事を振り返る

インフレや円安、そしてコロナ。令和の時代に入ると、平成の頃には予測できなかった新しい動きが出てきました。低成長経済が続く日本にあっては、令和の経済は今後どうなっていくのでしょうか。常に社会や経済は動いていきます。今から約30年前の日本は、バブルに湧き、誰もが明るい未来を信じていましたが、残念ながら元号とは異なり、災害も多く平和な世の中ではありませんでした。いまだ平成を引きずっている令和の経済課題は、平成の足跡を振り返ることによって、令和時代の進むべき道筋が見えてくるのではないかと思います。

今回は、平成の経済を中心に時間の流れに沿って見直し、令和の日本を見通すヒントを探っていきましょう。

平成から令和5年までの出来事を振り返る

1989年(平成元年)

・消費税導入(3%)

・日経平均終値が史上最高値の3万8915円をつける

・「1.57ショック」合計特殊出生率が戦後最低になる

1989年1月の昭和天皇のご逝去とともに、平成の時代が始まりました。この年には、消費税が導入され、所得税中心だった税制に新しい仕組みが取り入れられました。現在では国の税収の3割を占めるまでになっています。消費税導入の背景には、少子高齢化で社会保障費が増えることがありました。その一方で、1人の女性が一生の間に生む子どもの数(合計特殊出生率)は1.57と、1966年の丙午(ひのえうま)を下回り、少子化の問題が表面化してきました。

1990年(平成2年)

・日経平均株価の下落が始まる

1989年末につけた日経平均は、1990年の大発会には200円以上下げるところからスタートしました。1990年10月には、一時2万円を割り込む局面もありました。

1992年(平成4年)

・バブル崩壊で不況が深刻化(日経平均株価1万5000円割れ)

・不良債権の拡大

・失われた20年のはじまり

経済企画庁が前年1991年をピークに景気は下降期に入ったと発表し、公示地価も17年ぶりに下落していると発表があり、バブル景気が終焉したことが鮮明になりました。住宅金融専門会社7社の債務や銀行の不良債権が大幅に増えるなど、バブルの負の遺産との戦いが始まります。

1995年(平成7年)

・阪神淡路大震災

・地下鉄サリン事件など社会不安が広がる

自動車や百貨店売上げが連続前年減になるなど、不況が色濃くなってきました。そんな時期に阪神淡路大震災に見舞われます。また、3月には宗教団体による営団地下鉄の車内でサリン事件が発生しました。世相の暗いなか、住専7社の不良債権処理のため6850億円もの財政資金を投入[幸池1] することが決まります。

1997年(平成9年)

・消費税が5%に引き上げ

・金融破綻が相次ぐ

1989年に導入された消費税の税率が4月、3%から5%に引き上げられました。長引く不況の影響で、11月には三洋証券、北海道拓殖銀行が経営破綻、山一證券が自主廃業をするなど、大きくて潰れないと思っていた金融機関が破綻する出来事が続きました。

2000年代

・デフレが進行

・銀行の経営統合、合併が増える

国内ではデフレが進行していきます。航空業界でも低価格で新規参入する会社が登場します。また、1998年に日本長期信用銀行、日本債券信用銀行なども経営破綻し、銀行の経営統合、合併する動きが多く見受けられました。その後、金融再生プログラムを発表し、銀行の不良債権問題を解決する動きが強まります。2007年には郵政が民営化され、日本郵便グループが誕生します。

2008年(平成20年)

・リーマンショック

徐々に景気も上向きになってきたと感じられるときに、リーマンショックが起こります。これは米国のサブプライム住宅ローン危機がきっかけとなり、有力投資銀行であるリーマン・ブラザーズが史上最大級の破綻し、世界的な株価の下落、金融不安を加速させることになりました。このリーマンショックは、100年に一度の経済恐慌といわれました。

米国で始まった金融危機は、日本にも波及しました。この世界的な大不況を受けて、日本でも自動車関連の製造業を中心に「派遣切り」が社会問題に発展し、雇用不安が拡大しました。

2009年(平成21年)

・日経平均株価がバブル後、終値最安値7054円をつける

2008年のリーマンショックの影響を受けて、電機や自動車企業が巨額の赤字となり、人員削減が相次ぎます。日経平均株価も経済を反映して、終値で最安値をつけます。政治では、民主党政権が発足し、今までの行政のムダをあぶりだす「事業仕分け」が行われました。

2011年(平成23年)

・東日本大震災

・日本のGDPが世界第3位に後退

2010年に日銀のゼロ金利政策が復活したことなどで持ち直しつつある景気は、東日本大震災による甚大な被害で腰折れしてしまいます。電力不足が深刻化し物流も滞るなど、日本全体の経済に痛手を被りました。

2011年には、2010年の日本のGDP(名目国内総生産)の実額が中国から追い越され[幸池2] 、第3位になったことが確定しました。1968年以来、日本はGDP世界第2位の地位を保ってきましたが、日本の人口が減少していることが大きく影響しています。

2012年(平成24年)

・アベノミクス開始

アベノミクスとは、2012年12月に始まった第2次安倍政権において構想する経済政策で、「安倍」プラス「エコノミクス(経済学)」を合わせた造語です。大胆な金融政策、機動的な財政政策、成長戦略を3つの矢にたとえ、デフレを払拭し、日本経済の強化を狙うものでした。東日本大震災からの復興事業は、景気の下支えになりました。アベノミクスによって、2009年に7000円台まで下がった日経平均株価は回復基調となり、民間企業の業績回復に貢献しています。

2013年(平成25年)

・日銀が異次元の金融緩和

アベノミクスの大胆な金融政策において、2013年4月に日銀による量的・質的金融緩和が行われました。日銀が国債を大量に買い入れることで、市場に出回るお金を増やし、投資や消費を行いやすくし、経済を活性化するのが狙いです。これにより、それまでの極端な円高や株安が是正され、株価上昇していきます。デフレでマインドが委縮していたので、大きなインパクトがありました。

2014年(平成26年)

・消費税が8%に引き上げ

財政再建への道筋をつけるためという目的で消費税が5%から8%に引き上げられました。日本の財政赤字は膨らむ一方で、社会保障制度を維持するには増税が必要でした。アベノミクスによる一定の効果が得られ、景気指標が回復傾向であったため、税率が引き上げられることになりました。

2016年(平成28年)

・日銀がマイナス金利導入

2014年の消費税を3%も一気に引き上げたため、景気の好循環につなぐことができませんでした。そこで、2016年にはマイナス金利政策が導入されます。マイナス金利政策とは、民間の金融機関が日銀に預ける最低金額以上の当座預金について、金利をマイナスにすることです。すると金融機関は、日銀の口座にお金を置いておくと損をするため、融資や投資に回そうという動きが出てきて経済にプラスに働くとされます。

2019年(令和元年)

・消費税が10%に引き上げ

平成になって導入された消費税は、令和になると10%にまで増税されました。日本は速いスピードで高齢化が進んでいます。また、少子化問題も避けて通れず、高齢者中心になっている社会保障制度を子育て世代へ振り分ける転換が必要になってきました。消費税は、収入に関わらず、広く公平に税金を負担するため、景気にも左右されにくい安定した財源となります。

2020年(令和2年)

・新型コロナウイルスの流行

・緊急事態宣言発出

新型コロナの影響により、世界の市場で株価が急落しました(コロナショック)。感染のスピードは、瞬く間に世界中に広がりました。そのため、2020年に予定されていた東京オリンピックは、新型コロナの感染拡大を防止するため、1年延期して2021年に開催されました。

「新しい生活様式」と呼ばれることも多く、リモートワークに切り替える企業も増え、新しい生活スタイルが生まれました。しかし、人と会う機会や外出を控えるなど、外食や交通、レジャーの支出が減り、マインドも内向きになっていたため、景気回復には財政面で多くのテコ入れがされました。

2022年(令和4年)

・ウクライナ侵攻

コロナからの景気回復が見られるようになった矢先、2月にロシアによるウクライナ侵攻が起こります。ウクライナからの食料やエネルギー資源の輸送が困難になり、世界中の国々が急激なインフレに見舞われます。そのため、インフレに歯止めをかけるために、日本を除く先進国は、利上げをしてインフレを抑える政策を取ります。日本は利上げを行わないで、金融緩和を続けているため、円安が進みました。

2023年(令和5年)

・ポストコロナ

・国内のインフレや円安が進行

コロナが完全に収束したわけではありませんが、感染症と共存していく体制で政治や経済が動き出しました。日本は海外の先進国ほどのインフレは見られなかったものの、2023年に入ると度重なる生活必需品の値上げの動きが見られます。日本でも、米国のインフレ抑制の利上げがいつまで続くのか、米国と日本の金利差からもたらされる円安の行方が注目されています。この円安の影響を受け、2023年の日本のGDPがドイツに抜かれ、3位から4位に転落する見通し[幸池3] になったとの報道がありました。

キーワードから読む1:「バブル崩壊」と景気低迷の「デフレ」

平成経済は、バブル崩壊に始まり、物価が継続的に下落するデフレとなりました。物価が下がることにより、経済が停滞する悪循環からの脱却のため、政府の経済政策の多くがデフレ対策でした。アベノミクスもその一つです。

バブル期には、市場に大量のお金が出回ったため株価や地価が急激に上がりました。価格高騰が続くと誰もが信じていたので、ますます上がっていきました。しかし、日銀が金融緩和を中断すると、株価や地価は下落し始めたのです。そこで、好景気は永遠に続かないことに気づきます。大きな痛手を受けると、投資を行ったり、給料を上げたりするより、企業は利益を貯めるほうにシフトします。企業が方向転換をしない限り、デフレは解消しません。また、経済の成長には、古いビジネスの決まりでは対応できません。従来の規制を変えていくなど、デフレからの出口は今も模索中です。

キーワードから読む2:カネ余りの時代の「金融危機」

戦後の高度成長期からバブル期まで、日本は資金を集めて投資をして経済成長を続けてきました。しかし、バブルが崩壊すると急激な不況になったので、お金を借りてまで投資をするマインドがなくなってしまいました。資金不足の状態から資金が余るようになれば、お金を借りてくれるところが減り、不況のため売上げが減れば企業は借りたお金が返せず、金融機関は不良債権が積み上がり回収できなくなったのです。

絶対つぶれないと思っていた大手金融機関の破綻が続くと、1行に1000万円以上は預けられないと思う人が増えました。世界のお金の流れは連携しているので、日本発の金融恐慌が起きるのではと、誰もがびくびくしていました。そこで、政府は金融システムの安定に乗り出しました。

キーワードから読む3:「消費税導入」と「少子高齢化」

日本は、想定以上の速さで少子高齢化が進んでいます。もはや人口減は避けられず、地域の行政機能や公共サービスが維持できない不安が大きくなっています。そればかりではなく、増える高齢者の社会保障費の増大に国の財政が圧迫されています。

このまま少子高齢化が進むと、所得税の負担が少ない世代ばかりが増え、国の税収は減り、支出が増えることになります。税負担の世代間格差をなくすため、広く薄く税金を集めるのが消費税です。世界には日本より税率の高い消費税や付加価値税を課す国があります。これ以上、消費税を上げないためには、安定した持続的な経済成長ができる制度の見直しが必須になります。

まとめ

日々の断片的な出来事も長期的な流れで振り返ると、今後の課題が見えてきます。今後世界経済はインドなどの新興国が成長すると予想されています。デフレ解消は、高度成長を前提した考え方で乗り切ることは難しいでしょう。平成の課題は、多くが令和の時代に持ち越されました。これからは技術革新を推し進めるなど、量から質へ経済モデルへと転換する時期に来ているのではないでしょうか。

池田幸代  株式会社ブリエ 代表取締役

証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー

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