金融商品にかかる税金はどうなっている?今後増えるかもしれないって本当?

金融商品にかかる税金はどうなっている?今後増えるかもしれないって本当?
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私たちが資産形成を行っていく上で、「税金」は避けては通れません。お金や資産を動かす際には税金が発生するため、最も税金がかからない方法を考える必要があるからです。この金融資産の税金に対して、2021年秋に岸田政権が誕生して、金融所得課税を強化する動きが話題になりました。

今回は、内容が複雑で理解しにくい税金のうち、金融商品にかかる税金のしくみと今後の見通しを解説します。

金融所得課税をめぐる発言と株価への影響

2021年9月の自民党総裁選後に誕生した岸田政権では、金融所得課税を見直して、税率を引き上げる方針であることが提唱されました。株式の売却益などの金融所得課税は、復興特別所得税を除くと、現状20%源泉徴収されています。この税率の引き上げには、経済界や金融界、投資家から反発の声が大きく、株価にも大きく影響しました。この状況は、岸田氏が首相に就任した当初に株価が下がり、「岸田ショック」などとも呼ばれました。

この岸田ショックでお金を失った人は「岸り人」と呼ばれるそうです。

この金融所得課税強化の問題は、税制改正での焦点でしたが、2022年度税制改正では先送りされました。いったんは姿を潜めた金融所得課税強化の問題ですが、税制改正大綱には税負担の公平性から「検討する必要」があると明記され、いずれ見直しの議論が具体化しそうです。

所得税と金融商品の課税のしくみ

それでは金融所得課税を見る前に、所得税がどういう税金なのかを確認しておきましょう。

所得税は、個人の1月1日から12月31日までの1年間の収入を発生原因に分け、10種類に区分されています。所得税の計算は、総合課税が原則ですが、株式などを売った際にかかる譲渡所得は原則として申告分離課税の方式がとられています。

所得税の税率は、所得金額に応じて5〜45%の税率が適用になり、7段階に分かれています。超過累進税率という方式がとられていて、課税される対象額の増加に応じて、一定額を超えて増加した部分に対して高い税率を適用する制度になっています。たとえば課税所得金額が195万円以下では5%ですが、4000万円を超える場合には45%もの税率が課せられます。これは、税負担の公平からなされているものです。

さらに住民税は一律10%なので、所得にかかる税金は、所得税と住民税を合わせると最高55%ということになります。

一方、金融所得にかかる税金は原則として、所得税15%(復興特別所得税を除く)と住民税5%を合わせると合計で20%の申告分離課税です。株式や債券、投資信託、FXの場合の売却益、利息、配当金、分配金には、一律20%の税率がかかります。暗号資産(仮想通貨)の場合には、他の所得と合算して計算される総合課税に該当するので、最大の税率は所得税と住民税と合わせて55%になります。このように金融資産によっては、大きな利益を出すと、多額の税金を納めるものもあります。

この金融所得のうち申告分離課税になるものは、労働などで得られた所得とは切り離して計算されます。たとえば、給与所得や事業所得が高額で高い所得税率が課されていたとしても、金融所得で申告分離を選択すると、売却益や配当金などに対して20%の税金を納めるだけで済みます。つまり、金融所得が大きい富裕層の人ほど実質的な税率が低い税率で納税の手続きが終わり、有利になります。

また、金融所得のうち株式の配当金や投資信託の分配金は、復興特別所得税まで含めると利益に対して20.315%の税金が源泉徴収されて入金されます。保有していれば放っておくだけで収入が入ってくるのは、大きなメリットです。

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池田 幸代

株式会社ブリエ 代表取締役 証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不...

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